2025.01.10
治療前
治療後
はじめのご相談内容 | 「右の奥歯で噛むと鈍い痛みがあるので診てほしい」とご相談いただきました。 |
---|---|
カウンセリング・診断結果 | 拝見したところ、右下の奥歯(第1大臼歯)には虫歯を除去したあとに銀の詰め物を装着する治療が施されていましたが、詰め物の下に虫歯が再発しています。 さらにレントゲン撮影で確認した結果、右下奥歯の虫歯は歯の神経にまで達しており、歯根の先に炎症が起こり膿が溜まる「根尖(こんせん)病巣」が大きく広がっている状態であることが判明しました。 虫歯の進行状態と根尖病巣から、右下奥歯は歯の神経が死んでしまう「失活歯」であるため、細菌に感染した部分を歯の内部から取り除いて消毒する「根管治療」が必要と診断しました。 |
行った治療内容 | 診断結果を丁寧にお伝えし同意いただいたうえで、右下奥歯の根管治療を開始しました。 しかし歯根にひび割れが生じており、根管治療では改善が見込めないため抜歯が必要であることを説明しました。 抜歯後の隙間を補う方法として、以下の3つを提案しています。 ①取り外しが可能な「部分入れ歯」を使用する方法 治療期間は短く済みます。しかし、装着時の異物感に慣れるまで時間がかかる可能性や、噛み心地は自分の歯と比べて劣ることがあります。 ②前後の歯を削って連結した被せ物「ブリッジ」を装着する方法 入れ歯に比べて噛み心地は良好です。しかし、土台となる前後の健康な歯を多く削る必要があり、装着後のブリッジ部分はブラッシングが難しくなる傾向にあります。 ③骨に人工の歯根を埋め込む「インプラント」 ほかの方法と比較すると治療期間は長くなるものの、健康な歯を削ることなく天然歯のようにしっかりと噛むことができ、清掃も自分の歯と同じように行うことが可能です。 それぞれのメリット・デメリットをお伝えしたところ、患者様は「歯を削らずにしっかりと噛めるようにしたい」との理由から、③のインプラント治療を希望されました。 併せてインプラント治療を進めるにあたり、根尖病巣による顎骨の吸収でインプラントを埋入する骨量が不足しているため、骨を増やす処置「骨造成」が必要であることも説明し、了承いただいています。 まず右下奥歯の抜歯を行い、同時に骨を再生させる「骨補填材」を抜歯後の穴に入れる「ソケットプリザベーション」を実施しました。 3ヶ月後、CT画像で骨の回復状態を確認し、骨の厚みや神経の位置などを立体的に把握できるシステム「インプラントシミュレーションソフト」を用いてインプラントを埋め込む位置を測定しました。 その後、シミュレーション結果をもとにインプラント手術の流れやリスクを患者様にお伝えしています。 また、シミュレーションによって決定したインプラントの正確な埋入角度や方向、深さを手術時に再現するためのインプラント治療用マウスピース「ノーベルガイド」を作製しました。 インプラント手術当日、事前に歯のクリーニングと消毒を行い、口腔内を清潔な状態にしました。 次に麻酔を施しノーベルガイドを装着したうえで、歯茎を切り開かない「フラップレス手術」によりインプラントを埋入しています。 フラップレス手術は、歯茎に小さな穴を開けてインプラントを埋入する方法で、歯茎へのダメージが少なく、術後の痛みや腫れの軽減が期待できます。 手術直後、CTとレントゲンを撮影しインプラントの埋入状態を患者様と確認しました。 手術から3ヶ月後、インプラントが骨に定着したことを確認してから被せ物を連結するための部品「アバットメント」を装着し、口腔内を撮影するカメラ「口腔内スキャナー」でインプラント部分の被せ物を作製するための型取りを行いました。 被せ物の素材には、自然な白さがあり強度と耐久性に優れた「ジルコニア」を選択しています。 最後に、被せ物のフィット感や噛み合わせに問題がないことを確認したあと、取り外しやメンテナンスが容易な小さなネジ「スクリュー」を使用してインプラントに装着し、治療を終了しました。 |
治療期間 | 約8ヶ月 (抜歯後の治癒待機に3ヶ月、インプラント埋入後の待機に3ヶ月) |
おおよその費用 | 516,000円 (ソケットプリザベーション、CT検査シミュレーション、埋入手術、ノーベルガイド、アバットメント、被せ物などすべて含む) |
治療のリスク | ・外科処置後に腫れ、出血が生じる場合があります ・外科処置後に痛みが長引く場合があります。必要に応じ痛み止めを併用します ・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎などにかかる可能性があります ・糖尿病、肝硬変、心臓病などの持病をお持ちの場合、インプラント治療ができない可能性があります ・高血圧、貧血・不整脈などの持病をお持ちの場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります ・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります |