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東京赤坂の歯医者さん、赤坂クレール歯科クリニックです。
根管治療(歯の神経の治療)の治療後のトラブルでお困りの患者様をよく拝見します。
一度、根管治療の最終形である根管充填まで終わり、セラミッククラウンなどを被せてもらったものの、根管内の病巣が再発してしまい高価なセラミッククラウンを外しての再治療を余儀なくされるケースです。
今回はそのようなトラブルを回避するために、気を付けるポイントを当院の症例とともに紹介いたします。
根の先に膿が溜まってしまった場合(根尖病巣)、その周囲の骨が溶けてしまいます。
レントゲンでは根の先端の周辺の骨が黒く見えるようになります。
治療前のレントゲン画像。根の先端周囲の骨が黒く見え、骨が溶けていることが分かります。(右図の赤い部分)
この患者様は以前、別の歯科医院に通って根管治療を行っていまいしたが、途中で通院しなくなり放置してしまいました。根の中に膿がたまってズキズキするとの症状でいらっしゃいました。
レントゲン画像をみると赤く記した領域の骨が黒く見えており、菌や汚れの影響で骨が溶けているのが分かります。
治療当初は根の奥から根管を伝って膿が溢れ出てきました。
その後、根管の消毒を徹底して行い、3回ほどの根管治療で症状は改善しました。
根管から膿や汚れが出なくなり、症状も落ち着いたので、根管を封鎖する根管充填を行いました。
根管充填直後のレントゲン画像。まだ骨が溶けた部分は完全回復していません。
根管充填直後のレントゲン画像を見ると、根の先周辺の骨のはまだ黒く見えます。
治療前と比べると、多少黒い領域は小さくなっていますが完全に回復したとは言えません。
このように、根管治療のゴールの目安として「症状」や「汚れ」も大事ですが、それだけでは本当に根管内が除菌でき、病巣がなくなるのかは判断できません。
特に、この症例のように強い痛みや、膿、骨の吸収などが見られた場合は、根管充填後すぐにセラミッククラウンなどを被せるのは危険と言えるでしょう。
骨のレベルで改善が見られるまで、じっくりと待つことで根管治療が成功したのかを判断でき、再発のリスクを軽減するこにつながります。
根管充填後3か月のレントゲン画像(右)。左の術前と比べてて根の先端周囲の骨が回復してきたのが分かります。
先ほどの症例では、患者様と相談し3か月間経過を見ることとしました。
根管充填後3か月後のレントゲン画像をみると、治療前と比べて明らかに骨が回復しているのが分かります。
この後、セラミッククラウンを作製することとなりました。
次に、もう少し長期的に経過を見た症例をご覧いただきます。
治療前のレントゲン画像。奥の根の周辺の骨が広範囲に溶けていることが分かります。(右図の赤い部分)
10年以上前に大きなむし歯で治療をしてもらいましたが、その時は神経を残してもらい、しばらくは問題なく過ごされていました。
ある日突然、顎の奥から痛みが出て、ものを噛むと激痛が走るようになり来院されました。
レントゲン画像をみると大臼歯の根を取り囲むように骨が黒く写っています。
何らかの影響で神経が死滅してしまい、歯の中で神経線維が腐敗し根の周辺に膿を溜め込んでいる状態です。
症状も強かった為、根管治療に2か月以上通っていただきました。
根管充填直後のレントゲン画像。骨は回復傾向にあるものの、まだ黒く見える範囲は広いです。
ようやく根管からは膿や汚れが出なくなり、症状も軽くなったため、根管を封鎖する根管充填を行いました。
やはり、レントゲン画像では骨の黒い領域は減少したものの、まだ完全な骨の回復とは言えません。
根管充填後1か月のレントゲン画像。1か月では骨の回復はあまり見られません。
根管充填後1か月経っても、大きな変化は見られません。
先ほどの症例のように顎の骨の改善には最低でも3か月は必要です。
根管充填後3か月のレントゲン画像。骨がおおむね回復してきているのがわかります。
根管充填後3か月経つと、治療前に比べかなり骨が回復してきています。
ここまで改善が見られれば一安心ですが、患者様はまだ不安があり、強くかむとやはり痛みがあったため、仮歯を入れて長期的に経過を見ることとしました。
根管充填後1年のレントゲン画像。失われた骨が完全に回復しました。
根管充填後1年が経つと、完全に骨が回復し周囲の骨とも同様の見え方となりました。
患者様も普段の食事を気にせず行えるようになっていたため、セラミッククラウンを作製して治療完了となりました。
根管治療が必要となった原因や症状、そして骨の溶けている量によって、根管充填後に経過を見る期間は様々です。
症状が軽い場合は数週間の経過観察で被せ物を入れられることもあれば、上記のように長期的に経過を見なければならない場合もあります。
レントゲン画像で骨が改善していることを確認できれば、病巣が再発する可能性はかなり低くなります。
被せ物を作製するタイミングは歯科医師と患者様で相談し、不安が軽減された状態で治療を進めることが大切と言えるでしょう。